2009年8月9日日曜日

卵−11

「別に体の方は何ともないみたいね、、、何か精神的ショックかしらね」
「優子があんまり美人だから、ショックを受けたのかな?」
「そうかもね」
「え−−?   よく言うなーーー!!」
「フン、 とにかく心臓も脳の方も何もないみたいだけど、一応精密検査をした方がいいわね」
「急いで私のクリニックに運んでいい?」
「ああ、あの病院の前のマンションの1階ね」
「そ!」

「私、3か月だから、あんまり重いものを抱えたくないのよ」
「大丈夫、私一人でも車の中には入れられるから」
「向こうに行けば男手は何人もいるから、大丈夫」
「じゃー、心配ないのなら、料理の途中だし、、、家の中を整理してから追っかけて行くね」


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私は夢を見ていた。
雲海のようなところを一生懸命に走っている。
手足を必死で早く動かそうとするのだが、スローモーションのようにゆっくりゆっくりとしか動かせない。
走っているつもりなんだが、空中を浮いているような感じで、地に足が付いていない。

あ!  後ろから誰か追いかけてくる。
振り返ってみると、、、、、優子だ。
あー、つかまったらまたあの世界に引き戻される、、、!!
必死に速く走ろうとするが、相変わらずゆっくりゆっくりとしか進めない。
進むというより、先へ行けない。

優子がどんどん後ろから迫ってくる。
私の名前を呼びながら。

なんとか、なんとか、なんとか、、、、必死に速く走ろうともがいた。

すると突然に目の前に人が仁王立ちで立っていた。
みると、それは愛子だった。
思わず悲鳴をあげてしまった。
「あーーー」
「あーーー」
「あーーー」
その時、愛子が言った、 Sing! For Me !
「あーーー」
優子が追い付いてくる。
振り返ると、後ろから優子の腕が伸びてきた。
振り返った私の胸に優子の腕が伸びてきて、胸の中に手がめり込んでいった。
そのまま心臓をわし掴みにした。

Crows Stronger Yet !

心臓がギューっと握りつぶされ、破れて血が噴き出していった。

Sing for Me  !

優子の声を聞きながら、最後の悲鳴を上げた。

「あーーー」
 
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卵−10

山頂の展望小屋には鍵もかかっておらず、簡単に中に入ることができたので展望台に登ってみた。
ここから見れば、何か手掛かりが見えるかもしれない。
展望台には石碑が建っていた。
石碑の正面には上下の2か所に分かれて碑文が刻まれていた。

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西暦2050年に地球より100光年のX座Y星がスーパーノバを起こした。
その1000年後、3050年にはその衝撃波が地球を襲ってくることになる。
計算するに、その運命の日、地上の空気、水は全てはぎ取られ、地球は空気も水もない月のような死の星となるであろう。
これは2000年にはすでに予測されており、以来、世界から科学者、技術者の精鋭1000人を集めてミュータント、及びロケット、宇宙基地の開発を行ってきた。
2030年、ほぼ技術的なめどがつき、以来、月の裏側に開発拠点を移し、地球から選ばれし者9000人を集め月の1000人と合わせて、1万人の脳の中をそれぞれのミュータントに移し替えた。
予測通り2050年、スーパーノバが観測された年に、ミュータントの月から宇宙への移動準備が完了し、同時に選ばれし1万人の凍結保存カプセルを月地殻内部のマイナス200度の永久凍土の中に設置し終えた。
選ばれし1万人の冷凍保存処理は全てミュータントが行う事になる。
選ばれし者はミュータントに姿を変え、「死」を超越した存在として地球を離れ、新しい世界を求めて宇宙に出発する。
1万年後、再び月に戻り、月の灰の中から選ばれし者を再び呼び起こすであろう。
地球を捨てた選ばれし者の復活の日となるであろう。
復活の日、灰からよみがえった我らは感謝の涙を流すであろう。
願わくば神よ、その日に我々選ばれし者たちが慈悲を持って裁かれんことを。

西暦2050年2月1日 世界連邦                                 

         *****************:

西暦2100年に人類はついにDNAの細胞自殺の仕組みを突き止め、テロメアの除去に成功した。
さらに、それは老化の仕組みも同時に解決することになった。
しかしこの治療の完成のまえに新太陽の出現により人類のDNAが変質、この技術は過去のものとなってしまった。
新太陽の影響が出始める前に治療を行った僅かのものだけが、永久の生命を得た。
そして2150年以降、人類は胎児を産まず、代わって卵を産むようになった。
なをかつ卵からかえった人間は全て女性であった。
それから20年、女性の男性への性転換治療研究を続けるが、卵からかえって1週間以内の人間に対しての性転換しかできず、しかも、奇形の男性にしかならなかった。
ここに2200年、人類は男性を種の保存用の「子供を産む機械の部品」としてのみ、継続して卵からかえった直後の女性に対しての治療で特定数のみ製造、保存、飼育し研究を続けることとした。
2200年制定の「子供を産む機械に関する法」を記念して、ここに石碑を建てる。
また、生命の永久化については2180年に至りようやく成人前後の若い女性に限るが、治療方法が完成した。

西暦2200年2月1日 世界連邦。

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死から逃れるため、死のない世界を目指して、「死」を超越したミュータントに姿を変えて地球を旅立って行った人類が2050年にいたのか。
そして死のない世界を作ろうとしてその途中である、今の人類がある、ということか。
今の人類にとっては、「死」のない世界が永遠に続く事が望みなのか。
だから、生活のあらゆる局面で「し」を捨てているのか、、、、、なるほど。

石碑の裏側に回ってみた。
裏面にも碑文が刻んであった。
どうも日本語ではない。
ロゼッタストーンみたいだな、と思いつつなんとなく眺めてみた。

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We,Guilty Being, Made Our Selves.
Our Selves Come Out Into Universe For Eternal Life Now.
They Shall Return Here 10,000 Years After To Rise Out Us From Ashes.
We Shall Rise Up With The Tear On That Day.
We,Guilty Being ,Shall Be Judged On That Day When We Rise Up From Ashes.
Our Load, Grant Us.
Our Gentle Lord Have Mercy On Us.
AMEN.

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どうも英語みたいだけど、正しいのかな?
なんか怪しげな感じだな、−−。
何が書いてあるのか全然わからん。
最後の言葉は、「エイメン」かな?
どういう意味だろ?  分からん。
前にRを付ければ「ラーメン」だ。
家に帰ってラーメンを食いたい。

英語なんて I am a boy とか、 This is a pen しか分からんものなー。
金髪の女性とのデートで I am a boy とか、 This is a pen なんて、言う訳ねーだろ!
5億円の予算要求の調査報告書に I am a boy とか、 This is a pen なんて、書く訳ねーだろ!
日本の英語教育の連中なんて、バッカみたい。
日本語を知らなさ過ぎるよ。

それに英語が得意とか云うキャリアウーマンだか、女性起業家だとかいう連中のあの高慢な態度も嫌だねー。
日本語をよく知らなくて、日本の文化もよく知らないくせに、日常の英会話ができるというだけで俺のような英語全然ダメと云う男を見下した傲慢な態度は、、、、嫌な連中だよ。
自分より30cm以上背の高い白人にいつもベターとくっついてさ、、、。
俺なんかが挨拶しても横向いて気がつかないふりをするもんなーー。

悲しい気分になりながら石碑に寄りかかると、、、グラッと揺れて向こう側に倒れてしまった。
「アレッ?  固定してないの?」
倒れるとともに石碑は幾つかに割れて、同時に割れ目から白い煙がもくもくと立ち昇り始めた。
すぐにあたり一面が真っ白い煙に覆われ、どこからか音楽が聞こえてくるような、こないような、、、、耳がふさがれているような気分だった。
煙にむせんでいるうちにだんだん気が遠くなっていった。

ふと気がつくと、見慣れた光景、2階の書斎の机に伏せていた。
「あ!  夢か。  いつのまにか眠ってしまったのか」
1階から妻が呼ぶ声が聞こえた。
「まさちゃん、ラーメンができたよーー。  ついでに私が使ってたパソコン持ってきてーー」
よかったーー、「し」がちゃんと付いている。

そこで友人に上げることにしたとかいう、妻が去年まで使っていたパソコンを抱えて1階に降りて行った。
玄関に女性が一人立っていた。
「お友達の優子、パソコンを使ってもらう事にしたの」
あれ、どこかで見たような、、、、思い出せないな、、、。
「ども」

彼女がすかさず「はじめまして、優子です。」
「フン!、、、意外とちっちゃいのね」
 
「フン? 、、、、、、意外とちっちゃいのね?、、、、、」
「あ−−−!!!!      あの女医だ!!!!、、、、、、」

すっと気が遠くなっていった。

「あら! ご主人、失神しちゃったわ」

 

卵−9

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次の日、女医の元を逃げ出して、故岩山に向かう事にする。
同室の愛子が明日から泊まり込みなのと、優子が今日の夕方から出かけ、明日の夕方にならないと帰らないと言ったためである。
病院玄関の前はタクシー乗り場になっているので捕まえるのは楽だが、姿を見られる可能性が高い。
といっても札幌はタクシーの流しは殆どおらず、地下鉄の駅入り口とか大きな病院の出入り口とか大きなスーパーの出入り口にたむろしているのが殆どである。
空車で走っているのを見つけても、手を挙げてもまず止まらない。
そこで、50m程歩いて桑園駅の向かいのJUSCOの正面玄関の前に行くことにした。

タクシーでモイワヤマへ向かおうとするが、運転手から拒否される。
モイワヤマへは行ってはいけないことになっており、もし向かう人がいると、すぐに会社に連絡することになっている、という事だった。
行く先は知らないが、今まであの病院の近くから何人かの男性を乗せたが、みんな途中でパトカーにどこかへ連れて行かれた、とのこと。
「自分は丁度明日が67歳の誕生日で、今日限りで特別養護老人ホームへ入らなければならないので、今日一日だけの事だからあんただけは、助けてあげるよ」と言われた。
「西線の路面電車沿いにジーオンという病院があるから、その前まで連れて行ってあげる」、といわれた。
「タクシーは全部NAVIで捕捉、運航を会社のコンピューターに記録されているから、それとわかる所へ行く訳にはいかないのだよ」。
「病院なら、もしあんたが捕まっても、自分にも言い訳が立つからね」。
「そこから電車のモイワヤマロープウェイ駅まで10分も歩けばつくから」。
「ただし、昼間は山に登らないほうがいいよ、男がうろうろしているとすぐ捕まるからね」。
「暗くなってから登り始めるんだよ」。
「それと、モイワヤマに着いても道路を歩いて行ったら駄目だよ、パトカーが警戒しているし、夜間検問もあるからね」。
「もうひとつ、噂だけど、モイワヤマに迷い込んでいつまでも出られないと、そのうちに「石」になってしまうらしいよ、気を付けてね」。

 「運転手さん、ずいぶん親切だね。それに訛りが無いね。」
「ああ、自分も、多分あんたと同じ運命だったんだよ。」
「丁度、60歳の定年退職であのモイワヤマの途中に家を建てて妻と2人で済むことにしていたんだけれど、竣工してから間もなく2階でパソコンを操作していたら、あの病院の駐車場に落ちてきてね。」
「60歳だったんで最初から「不合格」になって、そこから老人施設に送り込まれたんだけど、こうして運転手として働かせてもらってるわけよ、今日までだけどね。」
「お客さんの身の上はよく分かっているよ。、、、、、着いたよ。気をつけて行きな。」

裏通りをぶらぶら歩きながら、うす暗くなるのを待ってロープウェイ駅へ向かった。
モイワヤマはふもとから立ち入り禁止になっていた。
特別の警備はしていないようで、柵を乗り越えることは容易にできた。
ロープウェイ駅は閉鎖されているようだった。
門を超えて中に入り込み、ロープウェイ下を登っていくことにした。
太陽が沈みつつあり、すっかり薄暗くなっていたが、月の明るさは私の知っている明るさの2倍はあった。
ノートの文字なども普通に読めそうな明るさであった。
    
1時間ほど登ると、登山道らしきものに出くわしたので、そこを行くことにした。
30分ほど歩くと疲れてきたので、道端で腰をおろして休んでいた。

すると下の方から「スタスタスタ」と歩いてくる男がいた。
いったい誰だろかと、ちょっと身構えていると「しがない旅人でございます。お先に」と言って通り過ぎて行った。
なんだい、変な言葉を使って、「しがない」だと、、、、、「し」がない!
そうか、あの病院も「し」がなかった。
職員も、パソコン表示の文字もみんな「し」がない!
しがない、、、しがない、、、しがない、、、、「『死』がない」ということか!!
「死」がないから自分の受診カードも200年近くたっても有効だったのだ。
あの女医も自分の生年月日を聞いても不思議な顔をしなかったのだ。

途中で1人の老人が休んでいた、と思った。
よく見ると、人間ではなく石であった。
あっちにも、、、、こっちにも、、、、人間の形をした石が座っていた。
ここをさまよっても、いつまでも家に帰れずに、そのまま石になってしまったのか、、、、かわいそうに。
しかしここでのんびりと休んでいる訳にはいかない。
すぐに山頂を目指して登り始めた。

卵−8

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外に出てみたいと言ってみた
「なんで出たいの?」
「2個の太陽を見てみたい」
「何で見たいの?」
「見たことないから」
「それから?」
「広い所へ出てみたい」
「なんで広い所へ出たいの?」
「なんか息苦しくって」
「なんか不満があるの?」
「いえ、ありません」
「外へ連れて行ってください」

車の中だけなら、いい、と云う事だった。
ただし、男性の恰好ではまずいので、女装してもらうという事だった。
175cmの女医の服は170cmの私には丁度合いそうだった。

彼女の着付けで、下着から着けさせられた。
「どう?  気分は?  気持ちいい?   フッフッフッフ。」
とんでもない、とは言えないので、ちょっとうつむいていた。
ブラジャーはさすがにつけなくてもいいという事になってほっとした。
「本当は付けたいでしょ?   フッフッフッフ。」
冗談じゃない!
ワンピースを着せられた。
顔を白く塗りたくられた。
口紅を塗られた。
アイシャドーを付けられた。
そのたびに何かしら、だんだんと人間から彼女のおもちゃに変わっていくように感じた。
「立って見せてごらん」、と言われ立ち上がった。

突然、彼女は私の両耳を引っ張り上げて鼻をくっつけるように顔を寄せてきて言った。
「逃げようと考えないことね。   どうなるかわかってるわね?」
「は、は、、、ハイ。 分かっています!」
「フン!」

「靴はスニーカーでいいよ!」
「車に乗るからおいで!」
「ハイ!」

マンション駐車場から車は出て行った。
助手席からみると、確かに影が全部2重、2方向に伸びている。
僅かに上の方を除くと、あまりまぶしいというほどではない橙色の太陽と真っ青に見えるぎらぎらとまぶしい太陽が合わせて2個見える。
街の景色は見慣れたものと変わらない様に見えた。
ただ、男性の歩く姿が全く見えない。
女性もみんな若い。しかも私より背が高い人ばかりである。
スタイルのいい、美人ばかりである。
優子の横顔をまじまじと見た。
彼女たちより一段美人顔なので、どういう訳かホッとした。
「どう? 私の方がきれい?」
「え?」  どうしてわかるのだろう。
「フッフ。  心の中をどうして見られているか、と思ったの?」
「こんなきれいな人達の相手をしているだけなのは楽しいけれど、、、、家に帰りたいなーー」
「おうちに帰りたいの?」
「うん」
「君のおうちは、私のマンションなの、間違えないでね」
「はい」

桑園駅の前を通りそのままJACOSの前を通り、はんこ屋の通りを左折、京王プラザホテルを通り、盤珪ソバ屋の前の通りを右折した。
ヨドバシカメラの表玄関の前を通り紀伊国屋書店の手前を右折、TWO−TOPの前で車を止めた。
「ちょっとここで待ってなさい」といって彼女は店の中に入って行った。
10分程して大きな荷物を持って出てきた。
後ろの座席にそれを放り込んだ。
「何買ったんですか?」
「24inchのディスプレイ。1万5千円だった。今度お友達からパソコンをもらうの。それ用よ」
「あ、安い。僕も欲しい」
「フン、  おうちに帰りたいの?」
「ハイ」
「あきらめなさい」
「はい」

そのままマンションに戻った。
ディスプレイは私が運ばされた。
だから、スニーカーなのか。

卵−7

この章は最も書きたい部分であるが、現在の日本の且事情に鑑みると、犯罪とみなされる恐れがあるので、極めて簡略に表現するにとどめる。

後ろの穴から入れられて後ろの壁を裏からこすられるとどうだとか、それが長い奴だと子宮を裏側から突っつくことになりどうだとか、壁の後ろをこすられるのと前をこすられるのとどう違うかとか、入口近くと億の方とどうだとか、子宮口の上と下でどう違うかとか、ラビアを舐められるのと撫でられるのと引っ張られるのとどう違うかとか、恥骨の上を抑えられながら出し入れされるとどうだとか、前と後ろの穴を同時に出し入れされる時、同時に出し入れされるのと互い違いに出し入れされるのとどう違うかとか、乳首を撫でられるのと引っ張られるのとかまれるのとどう違うかとか、足を閉じてやるのと開いてやるのでどう違うかとか、、、、書いてみたい事はいろいろあるのだが、それをやると今の日本では犯罪と判断される恐れがあるので、止めておく。

ま、2人の女性から愛のおもちゃにされながら、1週間ほどたった。
その途中でいろいろと聞かされることがあった。

2030年頃から生体脳とロボットとを結合する開発が行われ、2050年頃には完成していたらしいということ。
脳の機構そのものをコンピュータープログラムで擬似的に構成する技術が同じ頃に完成していたらしい事。
形状記憶の液体金属の技術が、これも同じ頃に完成していた事。
そしてなにより、月の裏側に高級基地作られ、その頃から大量のロケットがその基地に運び込まれていた事や、数千人規模で月基地に移住した人達がいた事。
ところが2050年以降、その月基地がもぬけの殻になり、移住した人たちがどこかへ行ってしまった事などを教えられた。

そして何より驚いたのが、今現在、つまり西暦2200年には太陽が2個あるという事だった。
古くからの太陽は2050年以降は急速に光を落とし、黒点はほとんど見られなくなり、フレアもほとんど見られなくなってしまったらしい。
表面温度もかつての7000度から今現在は4000度程度まで落ちているらしい。
従って真っ白い明るい太陽ではなくオレンジ色のまるで夕陽のような太陽が照らすようになった。
この頃から地球は急速に冷え始めた。

一方、2100年頃から太陽の位置から10度程離れた位置に明るく輝く星が見え始め、10年頃にはかつての太陽と同じくらいの明るさになった星がある。
色は元気だったころの太陽よりさらに温度が高く、青白くさえ見えるらしい。

場所は地球から100光年ほどの距離にあると思われていた。
そしてこの頃から人類のDNAに異常が次々に生まれるようになった。
一番大きな変化は、それまでも正常な状態ではなかったY染色体が突然消えてしまった事である。
つまり、染色体で「男性」を識別することができなくなり、DNA上では人類は全て女性となってしまったのである。
同じ頃、女性が妊娠をしなくなった。
男性との性交渉で妊娠することが無くなったのである。
男性の精子の異常は既に2000年頃から言われており、2008年のWHOによる北欧、イギリス、ドイツ、日本の成人男性の精子の調査報告では、北欧では50%、ドイツ、イギリス日本では30%の成人男性に精子の異常が発見され、かつ妊娠不能中での精子異常は北欧で30%、その他で20%に達していた。
当時のWHOの予測では2030年頃には北欧諸国で80%、イギリス、ドイツ、日本では50%の成人男性が妊娠不能なほどの精子異常な状態になると思われていた。

そして、2140年頃から男性の不妊化と並行して女性が卵をうみだしたのである。
最初は1年に一度、鶏の卵くらいの大きさのものを一部の女性がポロリと産み落としていたのであるが、数年もたつと殆ど全員の女性が、年に一度卵を産むようになった。
それも無性生殖であった。
しかも産み落とされた卵は3カ月ほどで孵化したが、生まれてくるのは全員、女性であった。
つまり、女性が無性生殖で女性を産み続けるという連鎖反応が確定したのである。
孵化した後3カ月程は保育器の中でないと育たなかった。

なんとかして女性から男性への性転換治療を開発しようとしたのであるが、孵化してから1週間以内なら性転換はできるものの、陰茎と精嚢に親指ほどの体がくっついている奇形しか生まれなかった。
しかも染色体にはY染色体は現れるものの、殆ど機能的にはないに等しい状態であった。

病院の掲示板で見たのは、それらの結果、人類が出した結論の一部であったのだ。

また、その謎はモイワヤマ山頂に行けば分かるらしいが、誰も言ったものはいないという事であった。

2009年8月8日土曜日

卵−6

一人の看護婦が、殆ど放心状態の私に顔を寄せて、両手で両方のほほをつねりながら、「頑張ったね!」と優しく微笑んだ。
「うん」とうなずいてしまった。
馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!  何が「うん」だ!
お前、男だろ!
若い女の子に凌辱されて「うん」だと!
とにかく、消えてしまいたかった。

「先生、揃っています」
「じゃ、始めて」
看護婦がマスクつきの携帯用ボンベを持ってきた。
私の顔にマスクを当て、ボンベのバルブを開けた。
「はい、大きく息を吸って」
「吐いて」
「吸ってー」
「吐いてー」
、、、、5回くらいまでは覚えているが、そのあとは何も覚えていない。

「先生、OKです」
「それじゃーね、みんなで廃棄用トランクに詰めて」
「廃棄委託先はあのクリニックね」
「配達先も同じよ」
「詰め終わったらすぐに配達に回すのよ」

女医はそこで電話をかけた。
相手はこの病院の向かいにある、自分の経営するくりにっくである。
「あ、優子だけど、30分程で病院からトランクが届くから、届いたらすくに15回の優子の部屋に入れておいてね」
「部屋のカギはしっかりかけておいてね」

優子はちらっと壁にかかっている時計を見た。
「あと20分るわね、患者はいるの?」
「3人いますけど、1番と2番と7番なので先生はこれで終わりです」
「あそう、もうちょっとここにいようか」
「先生、聞いてもいいですか?」
「どうぞ」
「先生のクリニック、この病院と同じくらいに古いって聞いたんですけど」
「それほどでもないわ、この病院ができたのは2000年だけど、私がこの病院に勤め始めたのは2012年からなのね」
「当時この病院の周りに調剤薬局が4件あってね、その内の1軒が、2014年にイオンの1階に移転、あの場所が空き家になったのね」
「お父さんがその跡を買いとってクリニックを開いたのね」
「その2年後からかけもちを始めたのよ」

「じゃー先生はもう220歳くらいなんですか?」
「丁度ね、でも血液年齢は30歳よ」
「あなたはいくつなの?」

「私は卵からかえって22歳です」
「そうかー、貴女の年齢だと、卵からかえるのよね」
「自分たちの頃はね、胎児の恰好で生まれてくるのよ。2.5kg〜3kgあったのよ」
「生まれる方も楽ではないけど、産む方はもっと大変で、1日がかりで産道や膣を20cm近く押し広げて生まれてくるのよ」
「うわー、痛そう」
「それでち宮や膣が裂けて大出血で死ぬお母さんもいたのよ」
「かわいそう」

「今はいいわねー、1年に1回だけ、卵が出てきて、、。それも自動的にね」
「自分たちの頃はねー、男が膣の中で射精して、その中の精子の1匹が卵と結合、『受精』ということになったの」
「あんまり古い事なんで、学校では教えなかったと思うけど、いまは男は必要ないものね?」
「そうです、、、楽しみの道具の使い道だけね」
「古くなったら生ゴミで捨てるもの」

「そろそろ引き上げようか」
「お疲れさまでした」

優子が病院を出てクリニックに到着したのは午後4時であった。
クリニック入り口で受付の女性に聞いた。
「荷物届いた?」
「はい、 お部屋に運び入れてあります」
「いいわ、明日は休みだったわね、、、、じゃー、これから超多忙だから、連絡厳禁よ」

部屋に入ると、さっそくトランクを開いた。
中に私が眠っていた。
優子は部屋に貼ってある予定表を見た。
同じ病院の病棟看護婦の愛子の予定表であった。
「今日は夕方5時空けで、明日1日は休みか、じゃー2人で楽しもう」

卵−5

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診察室は1番から7番まで廊下の片側に並んでいた。
反対側は検査室や受付、その他なんやかやと病院関係の専門の部屋らしきのが並んでいた。
廊下に水飲み器があったので、そこで水を2杯ほど飲んだ。
浄水器の上に「ここでうがいをしないでください」と張り紙があったので、仕方なく飲んだのである。

廊下にはベンチ式の柔らかいシートが3列並んでいた。
患者は初老の男性が数人、座って待っているだけであった。
何かしら、自分が老人扱いされているようで、はたまた、なんでここで診察を待たなければならないのか、分からなかった。
確かに診察券は持っているよ、それは先月、新型インフルエンザをうつされて受診したもの。
何か、悪い事でもしたのかなーー?

それにしても「どうでもいい科」はないだろう、呼ばれたら最初に抗議してやる。

ベンチシートで待っている時に、看護婦が薄い透明ホルダーを抱えてやってきた。
「先に尿検査と血液検査を済ませなさい」と言われた。
どうも口のきき方が命令口調で、気になるなー。
採尿室は廊下を左に曲がったすぐ目の前にある事は、ここへ来る時に見てわかっていた。
採血室は診察室の向かい側で、中に入って入口左の受付機に診療カードを差し込むと受付手続きが行われ、自動プリントで出てきた受付シートを受取、室内のベンチシートに腰掛けて待った。
5分ほどすると名前が呼ばれ、「3本採決になります、本人確認のため、自分の名前を言ってください」といわれた。
マスクをしているので眼だけしか見えないが、眼だけみていると、たいていの女性は魅惑的だと思いつつ、採血室を出た。

30分ほど待っていると、名前が呼ばれたので、5番診察室に入った。
若い女医だった。
あ! すっごい美人!
こんな美人なら何でも許しちゃう!
さんざん待たされたことも、「どうでもいい科」のネーミングの事も担当の女医の顔を見た瞬間に全部忘れてしまった。

「血液検査では特に異常はないようですね」
「血液での年齢は30歳ですか、、、、生年月日は西暦1980年か、、、、、」
「今までにどこかの病院か医療機関にかかっていましたか?」

「先月、新型院インフルエンザでこの病院の内科にかかりましたが、、、さっき見たら『内科』がないんですけど、、」
「ちょっとまってね、、、」
机の上のパソコンを何やら操作していた。
「前回の診察日は、、、、2009年6月ですか?」
「そうです」

「ではちょっと体の検査を行いますので、服を脱いでください、、、、、全部ね。」
「え?  全部?」
「そう、ゼーーンブ脱いで素っ裸になったら、そのベッドに寝てくださいね」
そこには産婦人科でよく使う大の字に開いて手足を縛る、例のいすが置かれていた。

どこからやってきたのか、看護婦が5人ほど、にこにこしながら様子を眺めていた。
恥ずかしさで顔がカーッと熱くなっているのが分かった。
ようやく、ゆっくりゆっくり、、、あられもない恰好でベッドに寝るとすかさず4人の看護婦が私の両手両脚をベッドに、しばりつけ固定、一人はすばやく事務的に私の陰茎に袋をかぶせ、袋の口をテープで張り付けた。
なぜ5人なのか、、、ここでわかった。

なんだ、仕事なのか。
てっきり他の診察室から興味本位で見物に来たのだと思ったからびっくりしたが、、、仕事なら別に恥ずかしがることもなかったのに、一人合点で馬鹿を見た。
まだ5人がにこにこしながら見ているが、、、、、まあ、どうでもいいか。
「どうでもいいか???」
「この診療科の名前ではないか!」

女医が椅子に座ったまま私の股を覗き込んで、「フン!、、、意外とちっちゃいのね。 じゃー始めて」
「フン」はないだろ!  「フン」は!!

「はい」と言って一人の看護婦がいきなり私のグランスを左手の親指と人差し指でつまみ上げ、右手で陰茎をこすり始めた。
すぐに左手を放し右手だけでグランスを撫でまわしたり、こすったりしている。
「あっ、、、あっ、、、あっ、、、」腰がそのたびに浮き上がった。
2,3分ほどたったであろうか、3回ほど「あっあっあっ」と連続して声が出た瞬間、腰が強く浮き上がり、体全体が硬直した。

「15cm、15mlです」
「あらー、足りないわねー」
「そうですね、20cmに20mlが合格最低ラインですから」

「1回目で不合格だけど、一応2回目も5分後にやって」
「はい」

何のことかわからず、ベッドの上で、恥ずかしさで人格が崩壊しつつあるのを感じながら、ぐったりしていた。
陰茎に被せられた袋はいつのまにか取り外されていた。
さっき、射精の量の事を言っていたから、はずして計ったのだろう。
それにしても、何も言わずにいきなりだぞ、いきなり、、、おもちゃにしやがって、、、、悔しい!!。
なんだか狂いそうだ。

看護婦が4人交代で温めた濡れタオルで又間や生殖器を丁寧に優しく繰り返し拭いてくれていた。
残った一人がまたビニール袋をかぶせた。
今度は別の一人がいきなり先回と同じような事をやり始めた。
先の看護婦のように事務的にせっせとやるのではなく、ずっと優しく巧みな指さばきだったので、たちまち体をそっくり返して行ってしまった。
「凌辱」されるというのは、こんな事なのか。
もう、体から 気力も力も全部失せてしまい、消えてしまいたい気分だった。

「15cm、10mlです」
「あらー、やっぱり全然足りないわねー」
「そうですね、2回目の最低限は15mlですからね」
「仕方ない、処分ですね」
「はい、手続きをやっておきます」

何の手続き?
「処分」って何?
もう女医に聞こうとする気力もうせてしまっていた。
自問自答するだけであった。

2009年8月7日金曜日

卵−4

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駐車場から、見覚えのあるところだと思い、建物の上の方を見上げると「札幌 立病院」という文字が見えた。
「市」がないね、と思った。
ポケットを探り財布と小銭入れがある事を確かめ、駐車場から病院内に入る。
とりあえず売店でおにぎりを買って食べてから、家に帰ろうと思った。
入口をはいってすぐ右の通路を10m程行った右側に売店はいつもの通りあった。
そこで100円の焼きたらこと梅のおにぎりを1個づつ,80円の250ml袋入りレモン飲料を買った。
店員の女性がお金を受け取る時に、私の股間をじっと見つめて、「随分小さそうね」と言った。

何!、、、人の股間を見つめて「小さそうね」とは何事だ!  とびっくり、同時に腹が立ってきた。
ムッとしつつ店員を無視、売店横の通路、窓際に3個並んだテーブル席には誰もいなかったので、一番手前の席に腰掛けて食事をとった。
「確かに小さいよ、忘年会で伊東へ行った時の大浴場でみた、斎藤の奴に比べると、半分程しかなかったものなー。」
「あいつのはでかかったなー、自慢げにぶらぶら揺らしながら浴場の中を歩き回っていやがって。」
「でもね、他人に向かって何もそこまで言わなくても、、、、」
それでも妻は毎晩、「ステキだったわ」と言ってくれてるし、、、、「あ!  あの店員の胸の名札、「斎藤」だった。」
「チクショー、クレームの投書をしてやる。」
食べ終わると、ゴミはテーブル席の横に置いてある分別ゴミBOXに入れた、紳士である事を自らと神様に見せるために。

売店の横を通り、待合室を横切って、一番奥の通路を左折、すぐ左側の壁のところへ行った。
そこには病院のコンセプトが大きく張り出してあり、市民への由緒正しい健康の秘訣が張りだされてあり、並んでクレームの内容と病院の対処が「情報開示」のタイトルでずらりと、10個位掲げられている。
、、、はずだが、、、、、無い!
あるのは、、、、「卵の正しい産み方」?    「男の正しい飼育の仕方」?     「用済み男の正しい分別廃棄の仕方」?   、、、、何だ!!!
後ろのインターネット検索用パソコンの並んでいるテーブルを見ると、、、、あった、クレーム受付BOXが。
 そこへ近寄ってみると、使用説明があった。
1. 受診カードを挿入せよ。
2. 指定パソコンから内容を入力せよ。
3、 受診カードを取り出せ。

とあった。
そこで財布から病院の受診カードを差し込んだ。
横の1台のパソコンの電源が入ったようで、画面に自分の氏名が表示され、暗証番号の入力を求めていた。
暗証番号を入力すると、「あなたは未だ受付を済ませていません。先に受付を済ませなさい」と表示された。
なんだか偉そうなパソコンだなーと思いつつ、病院出入口のすぐ横にある受診受付機の所まで戻り、受付を行う。

受付機の画面にメッセージが表示された。
いつもの、内科・XX医師 予約時間YYになります、というメッセージとはちょっと違うようだ。
「あなたは190年間、サボっていた。よって、「どうでもいい科・5番」にすぐに行きなさい」

なに?  190年間サボっていただと?  どうでもいい科?  「行きなさい」、だと?   
そこで改めて周りを見渡してみると、まず、病院の中に殆ど男の姿が見えない。
「殆ど」というのは、病院の前にはガードマンが5人程いたな、、、あれはみんな男、、、、老人ばかりだ。
ずらりと並んだタクシーの運転手は、女性らしきのも半分くらいはいたが、残りは定番の男の老人ばかりだった。

「診療科目」の掲示板を見ると、「どうでもいい科」と「どうでもよくない科」の2つしかない。
え?  「診療科目」だよ。
内科とか外科とか、胃腸科とか、眼科とか、、、何にもないじゃないか。
「診療科目」、「診療科目」、「診療科目」、、、、、どこを見渡しても、、、、無い!

さっきは気がつかなかったが、待合室奥の天井から下がっている行く先表示板によると、2階のエレベーターよりの通路に「どうでもいい科」があった。

2009年8月5日水曜日

卵−3

 あるサラリーマン、専業主婦の妻と2人での学生時代からのアパート暮らし。

今度、1軒屋を借りることにした。
経緯は、妻と2人でモイワヤマへハイキングに出かける途中で、ちょっと立ち寄ったコンビニの前の電柱に不動産屋の張り紙を見たことによる。
新築・1軒屋 5LDK建物50坪・土地200坪、月7万円、車庫2台分、敷金礼金なし、水回り改装済み。
さっそく、その不動産屋に携帯で電話してみると、まだ誰も申し込んでいないという事なので、ハイキングを中止して2人で物件を見に行くことにした。

その1軒屋と云うのは、中年の一家が6年前に建てて住んでいたが、新築草々ご主人がある日突然いなくなり、今度死亡認定されることになったので、その妻が実家に帰ることにしたためだとの事であった。
2階建てで、車庫は庭にあり、通路で母屋とつながっていた。
家主は既に引っ越してしまっており、家の中はガランとしていた。
必要最低限の照明器具やカーテンなどはそのまま残されており、家電製品や寝具、居室調度品、台所器具などを搬入すればよい様になっていた。
家主の確認をとるための審査があるという事で、妻が書類を揃えて不動産屋に持参、確認でき次第引っ越すことにした。

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引っ越して3ヶ月目、生活は非常に快適であった。
土曜日の朝、2階の書斎でパソコンをいつものように操作していた。
自然食品のサイトのHPをあれこれ検索していると、卵を販売しているという、ある頁に興味をひかれた。

「最新ニュース : ついに今年2150年、卵から孵化した女性を男性に性転換するDNA操作が成功しました」というものであった。
「ついては、卵から孵化させ、すぐに船転換手術を行い成人にまで飼育した男性20個をお好みのタイプをとり混ぜてパックし、を飼育ケース、1年間の飼育肥料付きで、送料込1万円」
「タイプについては詳細頁を参照してください」
え? 今は西暦2009年のはず、このHPの作者はまたいい加減な更新をして、随分と危ないHPだな、すぐに出よう。
 そこで画面の右下に卵のマークに「出る」と表示されたボタンをクリックした、さっさと危ないHPから元の検索画面に戻るつもりで。
所が、クリックした途端にディスプレイから突然に白い煙が立ち上り、あと言う間に部屋っ全体に広がっていしまった。

煙の向こうの方から「ドッチラケーー」という言葉が聞こえてきた。
急いで煙りを部屋の外に追い出そうと、立ちあがって窓を開けにかかるのだが、宙を歩いているようで、窓のところに行きつかない。
もがきながら、閉まっているはずの窓に手をかけようとしたとたん、そこに窓は無く、外に転げ落ちてしまった。

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「しまったー」、、、心は真っ青になった。
何しろ上下左右が全然わからない状態であるから、これはきっと大けがをするか、ひょっとして首の骨を折ったりして死んでしまうかもしれないと思いつつ、手足をばたつかせて何かにつかまろうとしていた。
が、、、いつまでたっても地面にぶつからない。
なんだか空中を遊泳しているような気分であった。

どのくらい時間がたったであろうか、1秒か、1分か、はたまた1時間か、1日か、、、、。
スーッと視界が開けてくると、野原のようなところに立っていた。
いや、野原ではない、どこかの駐車場だ。

 

2009年8月2日日曜日

卵−2

そんな中、卵からかえったばかりの人間の雛に対する性転換実験がくりかえされていた。
卵をそのまま孵化させた女性は、順調に育ち6年後には小学生、15年後には中学を卒業し、高校生になると同時に社会人としての成人としてとうろくされた。
平均身長も170cm、体重も50kg。
女性として孵化させる卵は、人口の減少を止める程度の数に限られ、残りは全て男性化の実験のために使われていた。
また、ごく少量が食用として高級レストランなどに供給されてもいた。

男性化の実験は思うようには進まず、ひとまずX染色体の一つをY染色体に変えることには恒常的には成功していたが、何故か、身体の成長が卵からかえった後、殆ど止まってしまったままなのである。
形もかなり歪なものだった。
長さ15〜20cm、直径3〜4cmの陰茎に直径4cm位の睾丸を2個収めた袋が、目立った外観であった。
頭や手足は一応くっついてはいるが、いずれも2cmくらいの直径と、4cm程度の長さのものが付いているだけで、歩きまわることは殆どできなかった。

陰茎部分を刺激すると、むくむくと大きく固くなり、やがて射精に至る。
射精される精子は、一応元気な状態であるが、性染色体は全てXであり、Y染色体は作られなかった。
つまり、遺伝子操作種子と同じく、男性染色体は、染色体操作した、その1代限りの効果しかなかった。

従って、出産は国策産業化しており、女性は18歳から40歳まで毎年1個ずつ卵を産むように、法令化されていた。
一般的な一人の女性が生涯で産む卵は22個程度と決められていた。
受精後3カ月程度で卵を産むようになり、3カ月程度で孵化し、3カ月程度人口保育器で育てられた。
卵を産む作業は、駅の近くに設けられている孵化工場出張所で、1人30分程度で行われ、孵化工場へ搬送されていた。

これら一連の処理工程については「子供を産む道具にかんする法」で女性の役割や行動規範が規定されていた。
一方、男性については、「子供を産む道具の維持に関する部品の取り扱いを規定する法」で使用方法、保存方法、廃棄方法について定められていた。
男性は、女性の維持のための消耗品として規定されていたのである。
その意味では牛や豚の方が高級とされ、ペットの猫や犬よりも生き物としての扱いは粗雑であった。

孵化後1週間以内に性転換操作が行われないと、男性化はできなかった。
男性転換された人間は、寿命は30年程度はあったが、実際には工場で成人化させられて女性に供給された後は1、2年程度で寿命が尽きてしまう者が多かった。

それは、勃起した場合、心臓に負担がかかり、射精時に心臓が痙攣する事が多く、弱い男はその時の1回限りかせいぜいで数回程度の射精で死んでしまうし、強い男もせいぜいで50回程度しか心臓が持たなかった。
女性が妊娠のための他、快楽のために男性を使用すると、男性の負担が大きく、どんなに強い男でも1か月も女性から連続して使用されると役目を終えて死んでしまった。

このような社会に2010年からタイムスリップした男の冒険物語である。

2009年8月1日土曜日

卵−1

 究極には有性生殖による細胞分裂によらない分離増殖がいいのであろうが、過渡的段階として卵で出産するのも、よい。
その時には、ブロイラーの如く無性生殖が行われ、ブロイラーと違って卵が雛に孵るという、遺伝子操作もよい。
男性はいらなくなってしまう。

西暦2200年頃の地上はこんな風になっているかもしれない。

20世紀、地上の至る所に人間が蔓延り、その総人口は70億から80億人と言われていた。
人間の次に多い動物は、人間に飼われている牛で、総数は約1億頭と言われていた。
人間は「道具を使う」という点で地球上の最強の動物である。
明らかに地球の動物の歴史で、絶滅直前の種と同じ状況、経過をたどっていた。

 2150年のある日、人間の女性が「卵」を産んだ。
そのニュースは世界中を飛び回り、その女性は一躍、世界でもっとも有名、世界で最も重要な人と呼ばれるようになった。
ところが、1年もたたずして卵を産む女性が次々と現れ、やがて20年もたたずに、殆どの女性は卵を産むようになってしまった。
しかも卵から孵化する赤ん坊は何れも全て女性ばかりであった。

ある意味、これは人類にとって好都合と思われた。
というのは、西暦2010年を境にして先進各国の男性のY染色体の劣化が著しく、男性はかろうじて肉体的奇形を発現せずにいるような有様であった。
加えて男性の精子も、特に先進国では2020年ころには80%の男性で妊娠させることが困難な奇形や弱わ弱わしい状態、また全体の50%は精子としての機能が全く持たない、精子を持たない射精しかできない男性となっていたからである。
先進各国では社会制度を変え、精子BANK、卵子BANK庁の設立と、出産時の全ての国民のDNA登録、及び頭蓋骨の内側にICチップをはめ込む手術の義務化によって、かろうじて人類社会を維持している状態であった。
先進各国と後発国との間ではその為の軋轢も生まれていた。

そこで女性が卵を産むようになり、しかも孵化した人間が全て女性であることから、まず考えられたのが無性生殖という事と、孵化した女性の人間をどうやって男性化するかという事だった。