今、2030年である。
パソコンは、日常生活に必須の道具として、情報のやり取りだけでなく、生活そのものでもある。
健康管理は、自宅のパソコンと医療機関との情報のやり取りで行うようになっている。
パソコンには、購入時に既にツールとして血圧計、心電計、血糖値測定器などの簡易測定器が備えられており、
また、医療機関の基幹データベースには、市民の顔写真や血液検査結果や、レントゲン写真、遺伝子情報などがストックされており、
医師は、患者の自宅のパソコンのカメラからリアルタイムで送られてくる、患者の写真と、過去の写真を見比べて健康状態を大雑把に把握できる仕組みになっている。
従って、市民は体の具合が悪いと感じた時は、まず自宅のパソコンで簡易チェックを行い、それを医療機関に送信して、簡易診断を受け、必要があれば病院へ出向く仕組みになっている。
また、それらのやり取りは、自動的に健康保険組合に送信され、会計処理も自動的に行われるようになっている。
そして、今、新しい機能が発売されるようになった。
匂いの微粒子を拡散させる装置が、発売されたのである。
レモンの匂いを漂わせるのであるが、問題もいくつか発生していた。
空中の微小なダニ類を活性化する
活性化されたダニ類が、動物の肺に入り込み、そこで増殖するようになる。
空中の花粉などを、活性化し、あたかもウィルスのように振舞うようになる。
活性化された花粉などが器官の粘膜に付着し、炎症を引き起こすようになる。
インフルエンザウィルスに作用して、突然変異を助長し、次々と新種のウィルスが生まれてくるようになる。
今、一人の若い女性が、あることで悩んでいた。
周囲の男性の息が臭いのである。
口臭、虫歯臭、汗のにおい、加齢臭、足の臭い、服の臭いなどなど。
まあ、殆ど臭いがないと思っていた男性社員のアパートへ遊びに行った時、部屋の臭いに閉口した。
冷蔵庫の臭いや、台所の排水口の臭いにビックリした。
そこで彼女は考えた。
毎日、定時になったらパソコンの電源を自動的に入れて、臭いを出すウィルスプログラムを作ろうと。
臭いは、レモンを選んだ。最初はオゾンを30分間出し、脱臭をしてからレモンの香りを30分間出すようにした。
ウィルスの仕込み方を考えた。
まず、実行ファイルで、好奇心をそそるものにする必要がある。
そこで、WINDOWS12と言うファイル名を選んだ。
WINDOWS12-RC2で、タイトル説明は、オフィススイートを含んだ、現行のWINDOWS7の2世代未来のプロジェクトのコードネームということにした。
これであいつは飛びつくだろう。
中身はWINDOWS7にしておき、インストール時に自動起動プログラムを仕込むようにすればいい。
念のため、一度でも起動されたら、臭い発生プログラムだけ、その他の実行ファイルに伝染するようにしておいた。
これで、WINDOWS12をファイル交換プログラムでダウンロードしなくても、共有ファイルに次々に感染して、容易に広がるだろう、と考えた。
仕込むプログラムは、午前0時になるとパソコンを自動起動し、レモンの匂いを発散させるプログラムを30分間だけ動かし、その後は自動シャットダウンさせる。
作るのに1週間ほどかかったが、何とかできたので、WINMXとWINNYの共有ファイルに乗せた。
パソコンは電源を入れっぱなしで、WINMXとWINNYも常時稼動させておいた
翌翌日、会社で彼に会った時、得意そうに話しかけてきた。
『発見したぞ、WINDOWSの最新バージョンが出てくるらしいぞ
誰も知らない最新版を見つけたぞ
RC2だから、最終チェックに入っているらしいぞ
きっと、開発者の誰かがNETに流したんだろうな
ダウンロードしてインストールしてみたんだけど、WINDOWS7と殆ど変わらなかったなー』
有美子は、しめたと思った。
これで彼のアパートの部屋は、レモンの香りでいっぱいなる。
彼以外にも、本命、ダークホース、不倫中の上司の隠れ家などなど、みんな、レモンの香りの部屋になる、と思った。
案の定、1ヶ月ほどしてから彼女の作ったウィルスはWINDOWS12-RC2の仮面をかぶって、全世界に広がっていった。
しばらくして、パソコン雑誌社からマイクロソフト社へ直接に真偽の問い合わせが殺到しだした。
それに対応して、マイクロソフト社のHPで声明が出された。
『WINDOWS12なる名称でファイル交換ソフトを通じて広まっているWINDOWSシステムは、当社とは何の関係もありません。』
パソコン雑誌などでも、分析記事が出回りだした。
『中身はWINDOWS7と同じ。
違うのは、起動時に臭い発生器を自動起動させるプログラムが仕込まれている事だけである。
この、匂い発生プログラムは、今、定番となっている、パソコンで部屋の脱臭や香匂を発生させる日本製のPONY社製を自動起動させるプログラムが仕込まれているようである。』
1ヶ月ほどたった頃、世界中で新種のインフルエンザが流行し始めた。
しかも、それまでのインフルエンザと違い。体内で抗体が出来ない。
羅患者の殆どが、肺に障害を起こし死亡してしまったのである。
当初、医療機関ではインフルエンザウィルスとみなしていたが、呼吸器粘膜から発見されたのは全く形状の違うウィルス細胞であった
アフリカや南米などでは、殆ど発生しなかったが、ヨーロッパ、北米、中国、インド、東南アジア、そして日本では殆ど全国的に蔓延していった。
誰も、どこでも原因を掴めないままに、半年が過ぎていった。
この新しく発生したインフルエンザ ウィルスの為に、ヨーロッパや北米、中国、インド、東南アジア、日本などは半年で人口が半減してしまった。
人の気配の消えた、家庭で、毎日、夜0時になると自動的にパソコンの電源が入り、匂い発生器が自動的に動き出し、1時間後にまたパソコンの電源が消える様子が毎日繰り返されている。
1年が過ぎた頃、北半球の諸国の人口は殆どいなくなってしまった。
工場などは殆どが休止、廃墟と化していった。
都市空間もそうである。
無人となった太陽光発電の家庭では、今でも夜0時になると、自動的にパソコンの電源が入り、臭い発生器が1時間ほど自動起動され、自動的に電源が切れることを繰り返していた。
有美子のアパートの一室も、そうであった。
主のいなくなった部屋の温度計は、室温5度、湿度20%を示していた。

0 件のコメント:
コメントを投稿