2009年7月18日土曜日

百万本のバラ−−加藤登紀子へ

6月のある日の物語。

一人の売れない絵描きの、6月のある日の思い出。
街にやってきた一人の踊り子に恋をした。
互いに思いは募り燃え上がる。
しかし彼には彼女を養う力は無い。
彼女はやがて大きな町の一座に旅立つことに。
 
彼は思った、最後に彼女の笑顔を見たい。
そうだ、花をプレゼントしよう。
純愛の証し、深紅のバラを贈ろう。
街中の赤いバラを全部、貴女にあげよう。
百万万本の真っ赤なバラで大地を覆い尽くそう。
彼女が窓から見る大地を覆い尽くそう。
まるで彼の破れた心臓から噴き出る血に染まったかのように。
 
踊り子が旅立つその日、
窓から見る大地は深紅のバラで覆いかぶさっていた。
一晩で窓から見る大地が深紅のバラで覆いつくされていた。
目覚めた踊り子は立ち尽くして窓から百万本のバラで覆われた大地を見つめていた。
絵描きが送った最後のお別れのプレゼントを見ていた。


踊り子の思い出は、百万本の深紅のバラで覆われた大地。
絵描きの思い出は、踊り子の笑顔。
全てをはたいて彼は唯一の思い出を得た、何時までも心に消えない、踊り子の笑顔。

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