その時、モニターDに「MINEにIUOOから連絡が入っている」との表示が点滅した。
MINEはヘッドバンドに手を伸ばし、通話スイッチを押した。
個人間の通信はまだ携帯電話形式であるが、機器はヘッドバンドに似たリングを頭にはめて行っていた。
相手からの音声は、ヘッドバンドの耳に近い所で骨伝導で行っていた。
従って周囲の雑音に邪魔されず、なをかつ音声が外に漏れることもなかった。
自分の話す声は実験的に2つの方法で同時に行われていた。
1つはヘッドバンドの端につけられた小型マイクにより音声を拾う形式、もう一つはヘッドバンド内に仕掛けられたアンテナで、頭部の中の脳波を拾って、それを相手に送信するもの。
連絡の内容は、「監視を続けていた恒星Zが超新星爆発をした」とのことだった。
100光年先と云う事は、つまり爆発してから既に100年たっているという事である。
100光年先にある惑星Zは太陽の100倍程度の恒星であるが、質量に比較し異常に大きいので超新星爆発の危険が高いと予想され、月の裏側にある観測基地で監視を続けていたのである。
超新星爆発をしたとなると、数年以内に地球の空には太陽が2個見えるほどの明るさになり、爆発後1000年後くらい(地球で爆発を観測してから900年後くらい)には衝撃波が地球を襲う事になると予想されていた。
100光年先からの衝撃波となると、宇宙線の来襲がまず第一に恐怖になるが、それとともに地球上の空気や海水が全て地球から引き剥がされて宇宙のかなたに吹き飛ばされてしまうと予想されていた。
勿論、動物、植物その他生物のほとんどは絶滅してしまい、なをかつその痕跡すら残らないことになる。
地球版「月」の誕生である。
勿論。地球の周りをまわっていた衛星も全部宇宙のかなたへ吹き飛ばされてしまう。
地上の固定して設置してある建造物も、100年以上続く超新星爆発の衝撃波にさらされ、全部、破壊されてしまう。
常に動いて地球を盾にして衝撃波から身を隠すことができるものしか、存在できなくなる。
従って生き残れるのは機械人間くらいである、動力が持つか、地下深く隠れるかすれば、であるが。
地球は機械惑星となり、水や空気などは真空の中で作り出すしかなくなり、空気を大量に消費する内燃機関や火力発電、あるいは風や海の存在を前提にするような発電機構などは完全に消滅してしまう。
動力は太陽光発電か原子力発電くらいになる。
しかし、太陽光発電は空気が無くなり太陽風の強さが強まり、寿命が極端に縮まるとともに、超新星爆発による宇宙線が大量に吹き付けることから、少なくとも100年以上は太陽発電パネルはすぐに破壊されてしまう事になる。
現在製造中の生体脳を持った機械人間は現在のままの設計でも半年はかかる。
開発は4年かかった。
仮に並行して製造するにしても、物的、人的資源からして6つのラインが限度であると考えられていた。
つまり1カ月に1体である。
衝撃波が十分に弱まる位置、あるいは安全に退避できる惑星の陰に隠れる場所を探すまでには、少なくとも800年以上の宇宙旅行が必要であると考えられていた。
超新星爆発から既に100年経っており残された期限は100年。
それまでに作れる機械人間は1000体程度である。
また、ロケット製造もあり、それらを地球上で行っていたのでは、人類に戦争が起こってしまいかねない。
地球からは見えない、月の裏側にロケットの製造工場とともに人造人間、及び冷凍保存脳を集結させておくことになる。
待避先としては、かねてより月の裏側で観測を続けていて、恒星Zとは対極の方向にあり、1000光年ほど離れたX座のイラク星が太陽系とよく似た環境で地球環境とよく似た大きさである事が分かっていた。
生まれてから50億年ほどたっていると思われるが、どのような大気構成か、生物の有無は分からない。
その為にも人造人間に「武器」は装着しておく必要があると考えられた。

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